UK発の“アーバン・グルーヴ”旋風!
― Central Line『Central Line』(1981年)
ロンドンのクラブシーンから新しい風が吹いてきた。80年代初頭、ジャズ・ファンクとディスコの狭間で新しい“ブラックミュージック”の形を探していたイギリスにおいて、**Central Line(セントラル・ライン)**はまさにその最前線に立つ存在だ。彼らのセルフタイトル・デビュー作『Central Line』(1981年)は、UKソウルの成熟を告げる記念碑的アルバムといっていい。
メンバーは、カミ・セイント・クレア(Vo, Key)、ヘンリー・ディスモア(G)、スティーヴ・ソルジャー(B)、リーロイ・ロマックス(Dr)ら。元々はロンドンのストリート・ファンク・バンドとして活動していた彼らが、ポリドールと契約し、スタジオに持ち込んだのは、アメリカン・ファンクのグルーヴとヨーロッパ的な洗練の融合だった。まさに“UK版クール&ザ・ギャング+シック”とも評されたサウンドである。
オープニングを飾る「Walking Into Sunshine」は、軽快なベースラインと煌びやかなシンセの絡みが絶妙なファンク・ナンバー。この曲は全米クラブチャートで最高5位、ビルボードR&Bチャートでも45位を記録。のちにニューヨークのクラブDJたちによって“ブギー・クラシック”として再評価され、80年代初期のブラックミュージック・シーンを象徴する1曲となった。
続く「Good bye」では、滑らかなヴォーカルワークとメロウなピアノが絡み合い、まさに都会の夜を思わせるソウル・バラード。さらに「I Need Your Love 」では、ストリングスのきらめきとリズムの切れ味が絶妙で、アーバン・グルーヴの真髄を聴かせてくれる。
このアルバム全体に漂うのは、いわゆる“ブリティッシュ・ブラックミュージック”の香りだ。アメリカのソウルに憧れながらも、自国の感性で再構築した結果生まれた独特のグルーヴ。それは軽やかで、都会的で、どこか知的。アメリカのブラックミュージックが持つ熱気に、ロンドンの曇り空のクールさを混ぜたような独特の味わいがある。
当時、日本のディスコでも「Walking Into Sunshine」はヘビープレイされ、ソウル・ファンの間では“イギリスにもこんなに黒いグルーヴがあったのか!”と話題になった。
セントラル・ラインはその後もアルバム『Breaking Point』(’82)で評価を高めたが、このデビュー作こそが彼らの真価を最もストレートに伝えている。ブラックミュージックが世界を結んだ――そんな瞬間を封じ込めた一枚だ。
主な収録曲:
- Walking Into Sunshine(全米R&Bチャート45位/クラブチャート5位)
- That’s No Way to Treat a Lady
- Shake It Up(ダンスフロア人気曲)
📀 総評:★★★★☆
UKファンクの黎明を告げた名盤。ブラックミュージックの新潮流を、ロンドンが生んだ都会のセンスで包み込んだ極上のアーバン・ブギー。












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