The Controllers『Stay』(MCA Records/1986)
80年代半ば、ブラックミュージックがディスコからアーバン・コンテンポラリーへと進化していた時代。その流れの中で、アラバマ出身の実力派ヴォーカル・グループ The Controllers が放った傑作アルバムが『Stay』だ。
柔らかなビートと美しいコーラス・ワークが溶け合うそのサウンドは、まさに“都会の夜のためのブラックミュージック”。
プロデュースには、後にFreddie JacksonやAnita Bakerを手がけるBarry Eastmond(バリー・イーストモンド)が参加。彼らの繊細なハーモニーに、Eastmondならではのジャジーでスムースなアレンジが溶け込み、アルバム全体を上質な艶で包み込んでいる。
◆1曲目「Distant Lover」——切なさの幕開け
アルバムの幕を開けるこの曲「Distant Lover」は、タイトル通り“遠く離れた恋人”への想いを綴ったメロウ・スロウ。
Barry Eastmondのフェンダー・ローズが静かに導くイントロから、グループの深いハーモニーがゆっくりと立ち上がる。80年代的シンセのパッドが夜の都会を照らし、まるで月明かりの下で愛を語るようなロマンティックな空気を漂わせる。
リード・ヴォーカルのトーンはあくまで穏やかで、感情を爆発させることなく淡々と愛を紡ぐ。この“抑えた情熱”こそが、ブラックミュージックの奥深さを象徴している。
当時のR&Bラジオではアルバム・カットながらリスナーからのリクエストが多く、特にナイトタイムの番組で人気を博した。
◆タイトル曲「Stay」——チャートを駆け抜けたメロウ・クラシック
続くタイトル曲「Stay」は、全米R&Bチャートで最高18位を記録。
じっくりとしたテンポ、滑らかなコーラス、そしてエレピが奏でる美しいコード進行——まさに80年代ブラックミュージックの教科書のような仕上がりだ。
この頃のMCAレーベルは、Atlantic StarrやKashifらと並んで“都会派ソウルの牙城”と呼ばれたが、The Controllersも確実にその一角を担っていた。
◆アルバム全体の印象
全編にわたってスムースで洗練されたグルーヴが流れる。Barry Eastmondのプロデュース・センスは、甘くも品のあるブラックミュージックを実現し、The Controllersの柔らかなハーモニーを見事に引き立てている。
アルバムはBillboard R&BアルバムチャートでTop50入りを果たし、派手なセールスこそなかったものの、FMリスナーの間では“知る人ぞ知るメロウ名盤”として根強い人気を誇った。
🎧 FMステーション編集部コメント:
「熱くないのに、心は燃える。これが大人のブラックミュージック。
夜更けにワイン片手で、ぜひ“Distant Lover”から聴いてほしい。」
ブラックミュージックの香りを色濃く残しながら、都会的でスムースな洗練をまとった『Stay』。
The Controllersが到達した“静かな情熱”の世界は、今聴いても決して古びることはない。

  









