Bar-Kays 「Choosey Lover feat. Jazze Pha」
ブラックミュージックが〈エレクトロ化〉と〈スロウ・ジャム再解釈〉の双方で揺れ動いていた1983年。シンセとリズムマシンがもたらした新世界と、70年代のソウル・エレガンスの余韻が同時に存在していた、まさに“交差点”のような時代だ。
Bar-Kaysの「Choosey Lover feat. Jazze Pha」(2022)は、この時代の空気を現代的に蒸留したような、“二重のオマージュ”として聴くと面白い。
そのベースラインには Mtume「Juicy Fruit」(1983) の官能的なローエンドのDNAが脈々と流れ、タイトルには Isley Brothers「Choosy Lover」(アルバム『Between the Sheets』1983) の甘くスロウな名曲の影が落ちている。
■ 「Juicy Fruit」へのオマージュ:あの“湿度”を再現するローエンド
83年にクラブを席巻したMtume「Juicy Fruit」は、それまでのファンクが持っていた“生のうねり”から一歩離れ、
「電子的なのに、妙に官能的」
という全く新しいブラックミュージックのセクシャル解釈を提示した曲でもある。
・抑制されたキック
・ぶ厚く粘るサブベース
・余韻をたっぷり残すシンセのコード
これらが織りなす “濡れた空気感” は、後のR&Bのプロトタイプとなった。
Bar-Kays版の「Choosey Lover」では、このJuicy Fruit的ベースラインの湿度をしっかりと踏襲し、
直線的に刻むよりも“揺らす”ことを優先した低域のグルーヴ
が、全編を通じて官能の土台を支えている。
これは偶然というより、明らかに“Juicy Fruitの空気”を取り入れた演出だ。


■ タイトルの元ネタ:Isley Brothers「Choosy Lover」への敬意
もうひとつの柱が、タイトルに直接現れている Isley Brothers「Choosy Lover」 だ。
「Between the Sheets」は83年ブラックミュージックの象徴的アルバムであり、スロウ・ジャムの美学を現代にまで引き継いだ作品だ。その中でも「Choosy Lover」は、
「男の優しさ」と「80年代ソウルの柔らかな質感」
が同居した名バラード。
Bar-Kaysバージョンは曲構造こそまったく別物だが、
・甘さ
・口説き文句
・艶やかなムード
といった“イズレー的ロマンティシズム”を現代的に再構築した印象がある。
つまり、
タイトルはイズレーのロマンチックさへのリスペクト、
サウンドはMtumeの肉感的な湿度の継承。
この組み合わせこそが「Choosey Lover」の最大の美味しさだ。

■ Bar-Kays × Jazze Pha が作る“ミッド80’sの新しい未来像”
Bar-Kaysは70年代メンフィス・ファンクを代表するバンドだったが、80年代には
エレクトロファンク〜シンセファンク路線
へ大きく舵を切った。
Jazze Phaの参加によって、
・南部らしい重心の低いグルーヴ
・メロウでスムーズな現代R&Bの質感
・80sファンクの明るさ
が混ぜ合わさり、結果として
83年と2020年代を同時に往復するようなハイブリッドサウンド
に仕上がっている。
まさに“ブラックミュージックの時間旅行”だ。
■ まとめ 黒音楽の「甘さ」と「湿度」を同時に蘇らせた作品
Bar-Kays「Choosey Lover」は、単なるフィーチャリング曲ではなく
83年ブラックミュージックのエッセンスを現代に再構築した“時代回想型オマージュ” だ。
- Juicy Fruit の肉感的ベースの湿度
- Choosy Lover のスイートなロマン
- Bar-Kays が持つシンセファンクの軽快さ
- Jazze Pha のモダン・サウス要素
これらが一つの器に収まり、80年代ブラックミュージック黄金期へのラブレターのように響く。
80年代を知るリスナーには「あの頃」の景色が蘇り、
新しい世代には「なぜ80年代が特別なのか」を自然と理解させる力を持つ、そんな1曲だ。





















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