1982年――日本では“ファンシー”というやわな言葉が街にあふれ、渋谷や原宿のブティックでは蛍光色のアクセやポップなロゴTが並んでいた頃。FMラジオでは、硬派なサウンド、ブラックミュージックの波、エレクトロファンクがじわりと浸透し始め、ダズバンド、ギャップ・バンド、キャメオ、そしてこのBar-Kaysのサウンドが、流れ始めた。
そんな時代に届けられたのが、メンフィス出身のファンク・グループ Bar-Kays のアルバム『Propositions』。
プロデュースは盟友アレン・ジョーンズ。レーベルはMercury。全米R&Bチャートでは最高9位、アルバム収録のシングル「Do It (Let Me See You Shake)」がR&Bチャート8位、「She Talks to Me With Her Body」も15位と、クラブシーンを席巻した。
■Bar-Kays――メンフィスの生き残りが放つ進化系ファンク
Bar-Kaysは1966年、メンフィスの伝説的レーベルStaxからデビュー。かつてはオーティス・レディングのバック・バンドとして名を馳せたが、’67年の飛行機事故でメンバーの多くを失うという悲劇を経て、残ったジェームズ・アレキサンダーとベン・コーリーを中心に再始動。70年代後半には「Shake Your Rump to the Funk」「Move Your Boogie Body」などのヒットを放ち、ブラックミュージック界の最前線に復帰した。
80年代に入り、シンセとエレクトロの要素を巧みに取り込んだこの『Propositions』で、彼らは新時代のブラックミュージックの方向性を提示したのである。
■アルバムレビュー
オープニングを飾るタイトル曲「Propositions」は、メロウでスリリングなイントロから一気に引き込まれるスムース・ファンク。都会の夜を疾走するようなテンションがたまらない。
続く「Tripping Out」は、ソリッドなベースラインに電子ドラムが絡み、まさに“80年代型ブラックミュージック”の幕開けを告げるナンバー。ディスコとファンクの狭間を行き来する心地よさは、当時のディスコ・キッズたちを虜にした。
シングル「Do It (Let Me See You Shake)」は、ダンスフロアで火がついた代表曲。全米R&Bチャート8位という快挙を記録し、MTV登場前夜のアメリカで“踊れる黒人音楽”の象徴となった。
「She Talks to Me With Her Body」も、熱気と色気が交錯するアーバン・ファンクで、艶やかな、セクシーな女性像を描き出す。そしてアルバム中盤の「Anticipation」では、メロウなメロディが甘く香り立つバラード。夜のFMで流せば、きっとドライブのアクセルを緩めたなるはずだ。
■日本の風景とともに
82年の日本といえば、原宿の「ラフォーレ」が若者文化の象徴として輝き、ソニーのウォークマンが街角にあふれていた時代。
“都会的な夜”を演出するブラックミュージックが、まさにそのファッションと並行して浸透していった。Bar-Kaysのこのアルバムは、そんな昭和のモードな夜にぴったりのBGMだった。新宿のディスコ「B&B」や「キャンディキャンディ」六本木の「キュー」や「スタジオワン」などで、彼らのグルーヴがフロアを包み込んだという話も残っている。
■ブラックミュージックの進化点
『Propositions』は、70年代の重厚なファンクから一歩先に進み、洗練されたリズムと電子音を導入した点で意義深い。つまり、「汗くさいファンク」から「香水のようなファンク」へ――ブラックミュージックの新しい方向を示した作品だった。
このアルバムを聴くと、80年代のR&Bがいかにポップスと接近し、そして日本のシティポップやAORにも影響を与えたかがわかる。
■まとめ
夜の高速道路を走るような、疾走感と艶を併せ持つ『Propositions』。
それは単なるファンク・アルバムではなく、「ブラックミュージック=都会の感性」という新しい時代の提案書だった。
■ブラックミュージックを楽しむお店
SOULBAR WHAT’S UP?(六本木)(ソウルバー ワッツアップ)
〒106-0032 東京都港区六本木3丁目8−12 イーストビル 1F
Google Mapクチコミより抜粋
「裏道の奥まった所にある、ドス黒音楽が鳴り響く老舗Soul Bar。見た目個性的だけど、気のいい店主が20年以上にわたって続けているんだから、居心地の良さは言うまでもなく。」
来日ミュージシャンも訪れる名ソウルバーを六本木で発見! 自然と体が動くアップミュージックで楽しいひとときを





















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