ladys Knight & The Pips* – Visions

GROUP

80年代を彩るブラックミュージックの美しい“ビジョン”、ここにあり。

グラディス・ナイト&ザ・ピップス「Visions」愛のメッセージをソウルフルに届ける、ブラックミュージックの女王

アメリカ南部ジョージア州アトランタ出身、Gladys Knight & The Pips。1950年代から活動を続ける彼らは、モータウン黄金期を支えた実力派ファミリー・グループだ。リード・ボーカルのグラディス・ナイト、そして兄弟と従兄弟で結成されたピップスのコーラス・ワークは、ゴスペルに根差した温もりと、都会的な洗練を兼ね備えている。70年代の「Midnight Train to Georgia」でグラミーを受賞し、まさにブラックミュージックの王道を歩んできた存在といえるだろう。

そんな彼らの1983年作『Visions』は、80年代の幕開けを飾るにふさわしい、ソウルとモダン・ファンクが融合した意欲作だ。全体のプロデュースを手がけたのはLeon Sylvers IIIをはじめとするSOLAR系の精鋭たち。サウンドはキラキラとしたシンセ・ラインと艶のあるベースで彩られ、まさにブラックミュージックの新時代を告げるものとなっている。

アルバムのハイライトは、まず全米R&Bチャートで第1位を獲得した名曲「Save the Overtime (For Me)」。シーケンサーとシンセ・ブラスを駆使したアップテンポ・チューンで、ディスコ以降のダンス・ミュージックとブラックミュージックの融合が見事に結実している。グラディスのパワフルなボーカルに、ピップスの男性コーラスが軽やかに絡むこの曲は、80年代ソウルの幕開けを告げた象徴的ナンバーだ。

続く「You’re Number One (In My Book)」では、スムースなグルーヴとロマンティックなメロディが印象的。こちらもR&Bチャートでトップ20入りを果たし、グループの健在ぶりを世界に示した。さらに「Heaven Sent」や「Ain’t No Greater Love」など、バラード・トラックではグラディスの深い情感が光り、ブラックミュージックが本来持つ“魂の温度”を改めて感じさせてくれる。

この『Visions』は、グラディス・ナイト&ザ・ピップスが古き良きソウルの精神を保ちながらも、80年代の洗練されたサウンドへと見事にアップデートした一枚だ。煌めくシンセとエレクトロ・ビートの中に宿るブラックミュージックの魂。その「温かさ」と「都会性」の絶妙なバランスは、今聴いても実に新鮮だ。

FMステーション的に言えば——これは、夜の高速道路を滑るように走りながら聴きたい一枚。ヘッドライトの光が流れるリズムの中で、グラディスの声がまるで風のように耳をくすぐる。80年代を彩るブラックミュージックの美しい“ビジョン”、ここにあり。

――――
主なチャート情報:
・「Save the Overtime (For Me)」:Billboard R&Bチャート 1位(1983年)
・「You’re Number One (In My Book)」:Billboard R&Bチャート 17位
・アルバム『Visions』:Billboard R&Bアルバムチャート 第3位

PROFILE:Gladys Knight & The Pips
1952年にアトランタで結成。60年代に「Every Beat of My Heart」でヒットを放ち、モータウン移籍後「I Heard It Through the Grapevine」で全米を席巻。70年代にはBuddahレーベルから「Midnight Train to Georgia」でグラミー賞を受賞。80年代以降も安定した活動を続け、ブラックミュージック史に燦然と輝くグループである。

by all means夜のハイウェイを照らすメロウ・グルーヴ。これぞ88年型ブラックミュージックの隠れた宝石。前のページ

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