GUYデビューアルバム『GUY』(1988)
1988年。
MTVから流れる映像も、クラブのフロアも、少しずつ“新しい匂い”を帯び始めていた。
そんな時代の空気を決定的に塗り替えたのが、GUYのデビューアルバム『GUY』である。
プロデューサー/キーボーディストのテディ・ライリーを中心に、ダミオン・ホール(Vo)、アーロン・ホール(Vo)、ティム・パターソン(Rap)からなるこのグループは、それまでの甘美で洗練されたR&Bとも、ストリート色の強いヒップホップとも違う“第三のブラックミュージック”を提示してみせた。
■ New Jack Swing、誕生の瞬間
このアルバムを語る上で欠かせないキーワード、それが
New Jack Swing。
硬質なドラムマシン、跳ねるような16ビート、
シンセベースがうねり、
その上をR&Bの滑らかなボーカルが舞う。
言ってしまえば、
ヒップホップのビート感 × R&Bのメロディ。
だが、それを“理論”ではなく“感覚”で成立させたのが、この『GUY』だった。
「Groove Me」
「Teddy’s Jam」
「I Like」
どの曲も、ラジオより先にクラブが反応したのが印象的だ。
日本のFMでも、夜のブラックミュージック枠で
「何だこれは?」というざわめきと共にヘビーローテーションされていたのを覚えている人も多いだろう。
■ ボーカルは甘く、ビートはストリート
GUYの面白さは、
アーロン・ホールのゴスペル由来の太く艶のある声と、
ダミオン・ホールのクールで都会的なトーン、
その対比にある。
ラブソングを歌っているのに、
背景には常に“ストリートの匂い”が漂う。
それは当時のブラックミュージックが、
「踊るための音楽」から
「生き方を映す音楽」へと移行していた証でもあった。
■ チャートと時代性
アルバム『GUY』は
Billboard R&Bアルバムチャート1位を記録。
シングル「Groove Me」もR&Bチャート1位。
しかしこの作品の本当の価値は、
チャート以上に
90年代R&Bの設計図を描いてしまったことにある。
この後、
Bobby Brown、Keith Sweat、Jodeci、Bell Biv DeVoe…
すべてがこのアルバムの延長線上に存在すると言っても過言ではない。

1988年の深夜、
ラジオのボリュームを少し下げてこのアルバムを聴いていた。
その時思ったこと。
「ブラックミュージックは、もう次の時代に行ってしまった」と。
『GUY』は、
ブラックミュージックが80年代を終わらせ、90年代を呼び込んだ決定打。
今聴いても色褪せないどころか、
そのビートは、現代のR&Bやヒップホップの奥底で、
いまだに鳴り続けている。






















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