LSG『Levert.Sweat.Gill』
――1997年、R&B界の“ドリーム・チーム”が放つ大人のブラックミュージック革命
1997年――日本では安室奈美恵やglobeがチャートを賑わせ、渋谷の街には「アムラー」たちがあふれていた時代。音楽の世界はJ-POPの隆盛と同時に、輸入盤コーナーではアメリカ発の“本格派ブラックミュージック”が静かに息づいていた。そんな中で登場したのが、R&Bファン垂涎のスーパー・ユニット、LSG(Levert, Sweat, Gill)。その名の通り、Gerald Levert(ジェラルド・ラヴァート), Keith Sweat(キース・スウェット), Johnny Gill(ジョニー・ギル)の頭文字を取った夢のコラボレーションだ。
この3人はいずれもソロでも実績十分。ラヴァートは名門ファミリーの血を継ぐソウル・プリンス、スウェットは“New Jack Swing”を作り上げた張本人、そしてギルはNew Editionの最強ボーカリスト。そんな彼らが一堂に会した時点で、ただならぬ化学反応が起きるのは当然だった。
デビューアルバム『Levert.Sweat.Gill』は、まさに90年代後半のブラックミュージック黄金期を象徴する一枚。全米R&Bチャートでは最高4位、ビルボード200でも初登場6位を記録。シングル「My Body」は全米R&Bチャート1位、Billboard Hot 100でも4位に輝き、甘く官能的なハーモニーでR&Bシーンを席巻した。日本でも輸入盤店での売れ行きは好調で、六本木や横浜のクラブではDJが“Slow Jamタイム”に欠かさずプレイしていたほどだ。
アルバム全体のトーンは、Keith Sweatが得意とするスロウ・グルーヴを基調に、Gerald Levertのディープなソウル感、Johnny Gillのゴスペル由来の声量が溶け合う極上のブレンド。特に「Round & Round」や「Where Did I Go Wrong」では、現代的なR&Bのサウンドに、70年代ソウルのスピリットを宿らせている点が聴きどころだ。まさに“ブラックミュージックの系譜”を90年代流に再構築したサウンドといえる。
💿 注目トラック:Curious(feat. LL Cool J, Busta Rhymes, MC Lyte)
アルバム中盤を飾るこの「Curious」は、まさに90年代ブラックミュージックのクロスオーバー精神を象徴する1曲だ。
プロデュースはKeith Sweat自身が担当し、そこにヒップホップ界のビッグネーム——LL Cool J, Busta Rhymes, MC Lyteが客演。スムースなR&Bグルーヴに、ヒップホップのエッジを重ねた構成は、当時の“R&Bとラップの融合”というトレンドを完璧に体現している。
ゆったりとしたテンポの中に潜む都会的なセクシュアリティ。
「Curious about your love…」というリフレインが繰り返されるたびに、洗練と熱情がせめぎ合う。
クラブではもちろん、深夜のFM番組「Midnight Groove」などでも頻繁にオンエアされ、日本でも“R&B=大人の夜”というイメージを定着させた名トラックだ。
Billboard R&Bチャートではトップ20入りを果たし、MTVでは豪華ゲストを迎えたビデオも話題となった。ラップとメロウ・ボーカルが絶妙に絡み合う構成は、後のJaheimやJoe, Usherらが受け継ぐサウンドの原点といえる。
97年当時の日本では、渋谷系やクラブ・カルチャーが成熟期を迎え、「アナログでR&Bを聴く」ことがスタイリッシュとされた時代。CDショップの試聴機から流れる「My Body」は、アメリカの甘い夜の香りを届けてくれる異国の風のようだった。ブラックミュージックが“お洒落”として浸透し始めたその瞬間、LSGはその象徴的存在として多くのファンの記憶に刻まれたのだ。
このアルバムは、単なる“R&Bユニットの一発企画”にとどまらない。3人の成熟したヴォーカリストが、それぞれのソロ・キャリアを超えて“男の愛”を語る、まさにアダルト・コンテンポラリー・ブラックミュージックの金字塔。
もしあなたが深夜の高速をひとり走るとき、あるいは恋人とワインを傾ける静かな時間に流すなら——『Levert.Sweat.Gill』は、その瞬間を永遠に変えてしまうかもしれない。
─ Editor’s note ─
ブラックミュージックの持つ“熱と繊細さ”を、ここまでスタイリッシュに仕立てた作品は数少ない。LSGの存在は、まるで80年代のTeddy PendergrassやLuther Vandrossが90年代に転生したような、ソウルの再発見そのものだ。





















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