CHERI - Murphy's Law

80年代NYディスコサウンド

CHERI ― “Murphy’s Law”で世界を踊らせた二人のブラック・プリンセス

1982年、ダンス・フロアの空気を一瞬で変えてしまうキャッチーなシンセ・ラインと、軽快に跳ねるリズムが世界を席巻した。その名も「Murphy’s Law」――“何でも悪いことは起こるものさ”というアイロニックなテーマを、こんなにキュートでファンキーに仕立て上げたのが、女性デュオ CHERI(シェリ) だ。

彼女たちは、カナダ・モントリオール出身の Rosalind HuntAmy Roslyn のコンビ。Rosalindはあのディスコ・レジェンド Geraldine Hunt(「Can’t Fake the Feeling」)の娘という音楽一家のサラブレッド。母譲りのソウル・フィーリングに、80年代的エレクトロ・サウンドを掛け合わせた新世代の ブラックミュージック の申し子といえる存在だ。

アルバム『CHERI』(Venture/1982)は、全編にわたりエレクトロ・ブギーの軽やかさと、ディスコ後期の艶やかなグルーヴを見事にブレンド。中でも「Murphy’s Law」は全米 R&Bチャートで10位Billboard Hot 100では39位 にランクイン。さらにダンス・クラブ・チャートでは 2位 を記録し、ヨーロッパのクラブでもスマッシュ・ヒットとなった。日本でもFM局のリクエスト・チャートを賑わせ、ブラック・コンテンポラリーの新星として一躍注目を浴びた。

このアルバムの聴きどころは、タイトル曲だけではない。「Give It to Me Baby」に通じるようなファンキー・ベースラインが唸る「Star Struck」、シンセブラスがきらめく「Working Girl」など、いずれも初期80’sのブラックミュージックの勢いを凝縮したサウンドが並ぶ。プロデュースを手がけたのは、母・Geraldine HuntとTony Green(Limeのプロデューサーとしても知られる)。まさにカナディアン・ディスコ界の黄金タッグが生んだ、都会派ダンス・アルバムの決定版だ。

ヴォーカルは軽やかだが、リズムの裏側には確かなソウルの温度がある。それがCHERIの魅力。機械的なエレクトロ・リズムに乗りながらも、“血の通った”グルーヴを感じさせるのは、彼女たちが真にブラックミュージックのDNAを受け継いでいるからだろう。

1982年という時代を象徴する――シンセとソウルの融合。
CHERIの『Murphy’s Law』は、今聴いてもフロアにスパークする小さな奇跡だ。


チャート情報(1982年)

  • Billboard R&B Singles:10位
  • Billboard Hot 100:39位
  • Billboard Dance Club Play:2位
  • カナダRPM Dance Chart:Top 5入り

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  1. FUNK

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