あの頃の灯り、いまの灯り——音楽から垣間見る時代の違い
今年も残すところ1ヶ月、すっかり街はクリスマスの風景だ。今から40年以上前の1980年代のクリスマスを思い出すと、街全体がひとつの巨大なイルミネーションのように輝き、恋人たちの特別な一夜として「年に一度の大イベント」の空気があった。一方、2025年のクリスマスは「それぞれの形・それぞれのペース」で過ごすスタイルが主流になり、家で楽しむコンテンツも、ギフトも、コミュニケーションの仕方も大きく進化した。
ここでは、1980年代の象徴的なクリスマス”らしさ”と、2025年の現代的なクリスマス”らしさ”を、ブラックミュージック、音楽とともに振り返って、当時を懐かしもう。そして最後に、あの時代を体験した世代にとって、あの頃のソウルミュージック、ブラコンを思い出させる今年発表されたR&Bのナンバーを紹介しよう。
■ 1980年代のクリスマス:きらめきとロマンの時代
● 80’sを象徴するクリスマスソング
- 山下達郎「クリスマス・イブ」
- ワム!「Last Christmas」
- マライア・キャリー(1990年代に入るが90s初頭の常連)「All I Want for Christmas Is You」
- 松任谷由実「恋人がサンタクロース」
- 杉山清貴「最後のHoly Night」
街のBGMはレコード店や有線が作る季節プレイリストで、流れる音楽は“街全体の気分”を統一するスイッチだった。

● 思い出される象徴的な過ごし方
① 恋人のために予約したレストランへ
1980年代は「クリスマス=恋人と過ごす日」が定着し、夜景の見えるレストラン、ホテルのディナーが大人気。「クリスマス・イブが流れる中、雪の降る東京駅で待つ恋人、というJR東海のCM的情景は80年代の象徴そのもの。

② クリスマスケーキとモエ・エ・シャンドン
コンビニではなく、百貨店や街のケーキ屋で予約したショートケーキ。バブル前夜からバブル期にかけて、ちょっと背伸びした高級シャンパンを片手に、ワム「Last Christmas」(1984)の切ないメロディを聴きながら、“忘れられない夜”を演出する空気があった。
③ アナログな贈り物文化
包装紙にこだわった百貨店のギフト。アクセサリーや香水が鉄板で、特にティファニーのブルーボックスは特別感の象徴。“手渡すこと”自体がドラマチックだった。バブル期象徴とも言えるCDのプアゾンも特別な匂いとしてその時代を象徴していた。

④ 街のイルミネーション巡り
原宿、六本木、新宿南口のクリスマス装飾。「恋人がサンタクロース」が街角で流れると、なんだか冬の魔法にかかったような気分になる。人が多いことすら「クリスマスの賑わい」として愛されていた。
■ 2025年のクリスマス:多様化・デジタル化・自分軸の時代
● 音楽の聴き方も進化
SpotifyやApple Musicによる“自分だけのクリスマスプレイリスト”。AIサジェストで80年代の名曲も20代に再発見されている。ワム!や達郎だけでなく、90年代〜2020年代のR&Bクリスマスも人気。
たとえば…
- ブライアン・マックナイト「Let It Snow」
- アリアナ・グランデ「Santa Tell Me」
- ジョン・レジェンドのModern Christmasシリーズ など
自分の気分・自分の空間で選ぶ音楽が中心になった。
● 2025年らしい象徴的な過ごし方
① “家クリスマス”の進化
プロジェクターでホームシアター、料理キットやデリバリーで豪華ディナーが簡単に楽しめる。部屋のデジタル装飾や、ARツリーも一般化。
これは、80年代の「外で過ごす」からの大きな転換。
② 家族・友人・恋人、すべての形がOK
1980年代は“恋人と過ごすのが正義”だったが、2025年は家族・友人・ソロ活、どれも自然な選択肢に。オンラインでつながる「離れていても一緒感」も強化され、クリスマスも「一番気楽な相手と過ごす日」になった。むしろクリスマスイブに恋人と過ごすことのほうが「不自然」とされる時代。そういう意味では欧米のクリスマスの過ごし方に近づいてきているのかもしれない。
③ ギフトはデジタル化
- 電子書籍・サブスク・オンラインレッスン
- ギフトカード・デジタルアート
- AIパーソナライズメッセージ
“物を贈る”より“体験を贈る”文化が拡大。”物を贈る”よりも、テーマパークやレストランや、旅に出るなど”体験を贈る”ことが主流になりつつある。体験は記憶に中に残し、その体験はデジタル化して、SNSにアップ、クラウドに保存することでいつでもその体験を甦らせるのだ。
かつてのティファニーは、今は「NFTのクリスマス・ジュエリーアート」「SNSの中の貴重な体験の思い出」へシフトしてもおかしくない時代となった。
④ カジュアル&静かな街
イルミネーションは残るものの、1980年代のように「人混みを楽しむ」風習はなく、“混んでる場所は避ける”ムードが一般化。
静かに散歩したり、カフェでゆっくり過ごすクリスマスも増えた。
■ 80年代のクリスマスソングを聴くと、なぜあの頃を思い出すのか?
● 「音楽=記憶の鍵」だった時代
80年代は、音楽が街の空気を決めていた。街に流れる“共通のBGM”によって、人は同じ情景を共有していた。
● 代表的な記憶のスイッチ
- 「クリスマス・イブ」
→ 夜のホームで恋人を待つ。白い息と少しの緊張感。 - 「Last Christmas」
→ 過ぎた恋を思い出す甘い切なさ。ウィンドウショッピングの帰り道の雰囲気。 - 「恋人がサンタクロース」
→ 表参道のイルミネーションと、年末のウキウキ感。
つまり、音楽と街の風景がセットで思い出として焼き付いている。
2025年の音楽はパーソナルになったが、だからこそ80年代の“街全体がひとつになる感覚”は、今となってはとても貴重な文化遺産だ。
■ まとめ:80’sのロマン vs 2025の自由
| 年代 | クリスマスの核 | 過ごし方 | 音楽 |
|---|---|---|---|
| 1980年代 | 特別な一夜/恋人のイベント | レストラン・ホテル・街に繰り出す | 街の共通BGM、名曲が季節を支配 |
| 2025年 | 自分らしさ/多様な形 | 上記だけの選択ではない体験すべて。家・オンライン・ソロ活・家族 | 個人プレイリスト、AIレコメンド |
1980年代のクリスマスソングを聴くと、“街がきらめいていた時代”の幻影がふっとよみがえる。そのノスタルジーこそ、いまも多くの人が80’sを愛し続ける理由なのだ。
あの頃を思い出させる25年最強クリスマスソング3選
――70s&80sの“温もり”をいまのR&Bで感じる、2025年新作クリスマス特集
あの頃のクリスマスソングを2025年にリリースされた/発表されたR&Bの中から、あの時代を生きた人にふと懐かしさを感じられるような観点でクリスマスソングを選んでみよう。ただし「70/80年代のクリスマススタンダード」というより、「昔のソウル〜R&Bのムードを思い起こさせる、現代のクリスマス曲」を軸にしています。
🎄 2025年にリリースされたR&B系クリスマス・楽曲から注目作
Snowing in Paris — Pentatonix ft. JoJo (2025)
- 2025年リリースのホリデーアルバムからの新曲。
- ア・カペラをベースにしながらも、時折入るコーラスの厚みやメロディの抑揚は、70〜80年代の “コーラス重視のソウル/R&B” を彷彿とさせる。
- 年配リスナーにとっては、“声のあたたかみ”や“人と人とのハーモニー”が、昔のクリスマスの暖炉の夜を思い出させるような、そんなクリスマスソング。
“あの頃”のクリスマスの夜 — レコードから流れていたコーラス群を思い出すなら、この一曲から今年のホリデーを始めてほしい。
Christmas Morning — Eric Benét (from album It’s Christmas, 2025)
- 2025年10月発表の同名アルバムからの収録曲。
- ベネットらしいソウルフルで滑らかな歌声に、暖炉の前で過ごす静かなクリスマスのような“静けさ”と“安らぎ感”がある。
- “昔のソウル系バラード” が持っていた落ち着きと深みが、今の録音クオリティで再現されており、特に年配のリスナーにはグッとくる仕上がり。
“家族と静かに過ごすクリスマス”に寄り添う、優しく穏やかなR&Bバラード。昔のレコードのような暖かさ。
O Holy Night (Spotify Singles Holiday) — Ravyn Lenae (2025)
- 2025年「Spotify Holiday Singles」シリーズのひとつ。
- トラディショナルなクリスマスキャロルを、R&B/ソウルのムードで静かに再構築。柔らかく、でもしっかり地に足のついた歌声は、まるで昔の教会の讃美歌とブラックミュージックの融合のよう。
- 年配の人には「教会で聴いた歌」「昔のクリスマス礼拝」の記憶を呼び起こすような、懐かしさと安心感がある。
クリスマスの夜、窓の外に雪が舞う――そんな風景が脳裏に浮かぶ、静謐で心温まるキャロル。
✨ あの時代が蘇る——昔のクリスマス感との共鳴
- いずれの曲も、最新のデジタル録音ながら、“声の重なり/コーラス”、“アコースティック寄りのアレンジ”、“ゆったりしたテンポや静けさ” といった、1970〜80年代のソウル/R&Bクリスマスの “空気感“ を意識している。
- レコードで聴いたあの頃のクリスマス、家族と過ごした暖炉やろうそくの灯り、街のイルミネーション――そんな記憶とリンクする“温かみ”がある。
- 最新曲だからこそ、音質もクリアで聴きやすく、「昔の歌は古くて…」と思いがちな人にもスッと入りやすいはず。





















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