🎧The Cool Notes ― 『Have a Good Forever』(1985)
80年代半ば、アメリカのブラックミュージックが日本の夜を照らしていた頃、UKから静かに、しかし確実に胸に響くアルバムが届いた。それが The Cool Notes『Have a Good Forever』(1985) だ。1980年代のUKブラック・シーンを語る上で、The Cool Notes の名前は欠かせない。
英国南ロンドンのミッチャムで結成されたこの7人組は、レゲエから始まり、ブリット・ファンク/UKソウルの黄金期を牽引した存在だ。アメリカのブラックミュージックの流れを吸収しながらも、UK特有の端正なメロディとスムーズなファンクが特徴で、日本でも“知る人ぞ知る”グループとしてファンの心を掴んでいる。

“You’re Never Too Young”
アルバム後半でそっと輝く “You’re Never Too Young” は、The Cool Notesの持つ UKソウルの繊細さと、ブラックミュージック的な暖かい説得力 が美しく調和した1曲だ。イントロでは軽やかなシンセ・ラインが、小雨まじりのロンドンの朝を思わせるように静かに揺れ、そこに寄り添うようにボーカルが柔らかく入ってくる。リズムはミドルテンポで、決して派手ではない。しかし、その“控えめな美学”こそがこの曲の本質だ。テーマは 「年齢に縛られない恋」。タイトルが示すとおり、若さを理由にする必要なんてない、という前向きさと優しさが、サビのメロディにそのまま溶け込んでいる。コーラスワークはこのアルバムの中でも際立って上質で、特にサビ前のハーモニーはまるで霧の中に灯る街灯のように、ほのかに心を照らす。バックのシンセ・ブラスは控えめでありながら、80年代UKソウルのキラキラした質感をさりげなく添えてくれる。
“恋に早すぎる季節なんてない。
静かなロンドンの朝がそっと教えてくれる、優しいメロウネス。”
“Spend the Night”のような大ヒット曲に比べると、表舞台で語られる機会は多くない。だが、この曲には The Cool Notesの“人肌のぬくもり” が詰まっている。アルバムを最後まで聴くリスナーに、じんわりと染みるご褒美のような位置づけの1曲だ。
■ Spend the Night
まず耳を奪うのは、全英5位を記録した大ヒット 「Spend the Night」。
柔らかいキーボードの波に乗せて語りかけるように歌われるメロディは、真冬の駅前ロータリーのように、どこか切なく、あたたかい。“メロウ・ミッド”という言葉の完成形がここにあると言っていいだろう。
■ In Your Car
次に続く 「In Your Car」 は、軽やかさと洒落たポップ感が同居した佳曲。
雨粒が跳ねるウインドシールドを思わせるシンセのリズムが、文字通りドライブソングとしての魅力を高めている。
アメリカのファンクとは異なる、UKならではのモダンでクリーンな“ブラックミュージック的洗練”が光る。
■ Have a Good Forever
アルバムタイトルを冠したこの曲は、柔らかく浮遊するシンセパッドと、スロウめのリズム、そして紳士的なボーカル。
日本のソウルバーでもじわじわ人気が高まり、常連が“最後の1杯にそっと流してほしい”とリクエストしたくなるような名曲。
■ このアルバムが持つ、唯一の温度
当時の日本では、LA産のブラックミュージックが強く支持されていた時代。だがこのアルバムは、そこに “UKだけの軽やかさ” をそっと差し込んだ。湿り気を帯びた都会の空気、シャープで端正なメロディ、そして柔らかなメロウネス。その独特のブレンドこそが、The Cool Notesの大きな魅力だ。
ブラックミュージックの魂を、UK流の繊細さで磨き上げたサウンドがある。それを体現した作品こそ、『Have a Good Forever』である。
ロンドンの冬の路地裏を歩くような、静かでロマンティックな情景美。甘く漂うメロディが、深夜のリスナーの心をそっと撫でる。
UKソウルの金字塔であり、80年代メロウの“秘密の定番”とも呼べる1枚だ。





















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