★UK発の新時代ソウル──「Return of the Mack」に見るブラックミュージックの新風
1996年、ロンドンから届いた一枚のCDが、世界のブラックミュージック・シーンを大きく揺さぶった。その名も『Return of the Mack』。アーティストはマーク・モリソン──イギリスのレスター出身、カリブ系移民の血を引くシンガーである。
英国産R&Bといえば、これまでソウルⅡソウルやオマーなど、アンダーグラウンド寄りの音が主流だった。しかし、この男の登場は違った。堂々たるポップ・チャートの頂点を狙い撃ち、ついに本国UKシングルチャートで「Return of the Mack」が7週連続1位を記録。さらに全米ビルボード・ホット100でも2位に輝き、ヨーロッパ全土で爆発的なセールスを叩き出した。

このタイトル曲は、シンセベースと軽やかなビートに乗せた哀愁のメロディ、そしてモリソン独特のしゃがれたヴォーカルが織りなす“復讐のファンク”。別れた恋人へのリベンジをクールに歌い上げながらも、その奥にはどこか切ないソウルの匂いが漂う。まさに90年代ブラックミュージックの王道とUK流の洒落っ気が交差した瞬間だ。
他にも、「Crazy」や「Trippin’」など、クラブシーンを意識したグルーヴ感あふれるナンバーが並ぶが、決して機械的ではない。サンプリングを巧みに用いながらも、どこか人肌の温度を感じさせる。そこにマークのソウルフルなヴォーカルが重なり、R&Bという枠を超えた“イギリス流ブラックミュージック”の完成形がここにある。
当時の日本は、まさに渋谷系ブームの真っ只中。ピチカート・ファイヴやフリッパーズ・ギターが街を彩り、クラブではアシッドジャズが流れていた頃。そんな時代に、この『Return of the Mack』は“海外の最新ブラックミュージック”として渋谷WAVEのR&Bコーナーに堂々と並び、輸入盤を手にした若者たちは新しいソウルの波を感じ取っていた。ファッションでも、スーツ姿にロングコートというマークの英国紳士スタイルが、代官山や原宿の一部ファッショニスタの間で静かなブームを起こしていたのだ。
アメリカからではなく、ヨーロッパから逆輸入されるブラックミュージック──それがこのアルバムの本質であり、後に続くCraig DavidやSealらUK勢への道を開いた。
★Mark Morrison プロフィール
1972年、ドイツ・ハノーファーに生まれ、幼少期をイギリス・レスターで過ごす。ジャマイカ系の両親のもとで育ち、教会の聖歌隊で歌を磨いた。1995年にデビュー・シングル「Crazy」を発表し、翌年『Return of the Mack』で一躍スターに。
その後は一時的なトラブルに見舞われるも、彼のデビューアルバムは全英チャート第4位、プラチナ・ディスク認定という大成功を収め、UK R&Bシーンの象徴的存在として記録された。
90年代の空気をそのままパッケージしたこの一枚。
ブラックミュージックがロンドンで咲いた夜明けの証。
日本のR&Bファンが初めて「UKソウル」という言葉を強く意識したのは、間違いなくこの“マックの帰還”からだった。
「ロンドン発、世界を揺らした“復讐のファンク”。——マックは帰ってきた。」
★これも必聴
Adina Howard – Return of the Freak Mack
Sickick – The Return (Post Malone x Mark Morrison Remix)
G-Eazy – Provide (Official Video) ft. Chris Brown, Mark Morrison




















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