ソウルバーのある街

高円寺という街とソウルミュージック

——古着とライブと“黒いグルーヴ、ソウルミュージック”が共存する街

■ 高円寺という街の歴史

中央線沿線でもひときわ個性が強く、サブカルチャーの発信地として語られることの多い街・高円寺。そのルーツは江戸時代、妙法寺(高円寺)に参拝する庶民の「行楽地」として栄えたことに始まる。戦後は学生や職人、文化人が多く住み、1960〜70年代にはフォーク文化の中心地のひとつとして急速に発展。1980年代になると古着屋、個人経営のバー、バンドマンの溜まり場となるアパートが増加し、自然と音楽カルチャーが集積していった。
その結果、現在の高円寺は「商店街 × 音楽 × サブカル」が渾然一体となった、唯一無二の“文化のるつぼ”となっている。


■ 音楽スポットが点在する街・高円寺

高円寺は、ソウルミュージックだけでなく、ジャズ、ロック、パンク、オルタナティブ、ヒップホップまで、ジャンルを問わず音楽が生きている街だ。

  • 小規模ライブハウス
  • セレクト感の強いレコードショップ
  • 音楽好きが集まるバー
  • ギターロック系からブルース、そしてソウルまで網羅するDJバー

…こうした店が商店街から路地裏まで自然と共存している。


■ “なぜ高円寺には音楽関連の店が多いのか?”

理由はいくつか考えられる。

① 歴史的に「住みやすさ」が音楽家を呼んだ

戦後〜80年代にかけて家賃が安く、学生・ミュージシャン・アーティストが多く住みついた。彼らの日常が街の文化を形成し、そのまま次世代へ継承されている。

② 商店街文化が、個人経営の店を受け入れた

中央線文化の特徴でもある「個人店が生き残れる土壌」。高円寺には大型資本よりも個性的な小さな店が好まれ、音楽バーやレコード店が自然と根付いた。

③ ライブハウスが“街のDNA”になった

高円寺ShowBoat や 高円寺HIGH など、名物ライブハウスの存在がミュージシャンの往来を増やした。出演者が夜な夜な高円寺で飲み、また音楽好きが集まり、文化が循環していく。これが高円寺特有の“音楽導線”となっている。


■ DOPE SOUL TRAXX(ドープ・ソウル・トラックス)@高円寺

——高円寺の夜に潜む、濃厚ブラック・グルーヴの抜け道

高円寺の路地裏にひっそりと佇む DOPE SOUL TRAXX
名前のとおり“DOPE=濃厚でクセのあるブラックミュージック”を徹底して追求する、
高円寺でも屈指のソウル/ファンク特化型バーだ。

■ 音楽性:70〜90’sソウルを軸に深く掘り下げる

ここは、単にヒット曲が流れる場所ではなく、Curtis Mayfield、Donny Hathaway、Isley Brothers、Maze、Con Funk Shunといったソウル・ファンクの名匠たちを当たり前のように織り交ぜつつ、マニアックなB面曲や12″ヴァージョンがさらりと流れるのが魅力。時に80’sモダンソウル、90’sネオソウルまで飛ぶが、すべて“黒さ”の基準で選曲されているため、統一感あるグルーヴが続く。音楽に対する愛とこだわりが、空気の中に濃厚に漂うバー。

■ 雰囲気:高円寺らしいラフさ × 深夜の熱

店内はウッディで暗め、照明も落とし気味で、“音に浸るための空間”という明確な意思が伝わってくる。1人で来ても自然と馴染める空気感があり、ブラックミュージック好き同士の距離が近いのもここの魅力。

常連客にも音好きが多く、「この曲の元ネタって…」「これ誰の12インチ?」そんな自然な会話が飛び交う夜も珍しくない。

■ 高円寺という街との親和性

高円寺が持つ“雑多で自由なカルチャーの器”の中で、DOPE SOUL TRAXXは黒い音のディープゾーンとして存在感を放っている。ライブ帰りにふらりと立ち寄る人、レコードを掘ったあとに1杯だけ飲む人、ソウルバー巡りをする人──
誰にとっても“濃すぎないけど深い”理想のポジションにあるバーだ。

■ こんな人におすすめ

  • ソウルやファンクをじっくり聴きたい
  • 流行よりも“渋い黒さ”を求めている
  • 語るより、音に浸りたいタイプ
  • 1人で飲めて、気が向いたら人と話せるバーが好き

高円寺のソウルバーを語るうえで、
DOPE SOUL TRAXXは確実に外せない1軒 といえる。

DOPE SOUL TRAXX
〒166-0003 東京都杉並区高円寺南4丁目6−7 シェ・ヌープラザ第5日東ビル 1F
ウェブサイト


MAZE – 高円寺に刻まれた“黒い迷宮”の記憶

——2018年に幕を閉じた、忘れられないソウルバーの物語

高円寺のソウルシーンを語るうえで、
MAZE(メイズ) の名前を避けて通ることはできない。
2018年に惜しまれつつ閉店したこの店は、
多くのブラックミュージックファンにとって“第二のリビングルーム”のような存在だった。

■ 独特の空気が流れる「黒い隠れ家」

MAZEは、ド派手でも広くもない。
しかし、一歩入った瞬間に分かる“音の密度”。
70〜90’s ソウル、ファンク、モダンソウル、ネオソウルまで、
店内のスピーカーからは常に艶のある黒いグルーヴが流れ、
照明を落とした空間にその余韻がじっくりと溶け込んでいた。

特に印象深いのは、深夜の時間帯。
Isley Brothers のスロウが流れ、隣の席では誰かがそっとカクテルを飲む。
何も語らずとも“音だけで共有できる時間”がそこにはあった。

■ MAZEが愛された理由

音の深さとマスターのセンス

選曲は決して派手さを求めず、
Donny Hathaway のライブ盤、Maze ft. Frankie Beverly、Con Funk Shun、Harold Melvin、Teddy Pendergrass
“本物のブラックミュージック”を徹底して貫いていた。

常連からは、
「MAZEでかかる曲は、どれも“次に繋がる黒さ”がある」
と語られていたほど、選曲に一本筋が通っていた。

音好きが自然に集まる“磁場”だった

MAZEには不思議な磁力があった。
有名DJ、ミュージシャン、レコード愛好家、ソウル初心者まで、
音を愛する人たちが自然と吸い寄せられるように集まっていた。

1人で来てもまったく浮かず、
むしろ“音さえ好きなら誰でも歓迎”という優しさがあった。

高円寺の夜に欠かせない存在だった

高円寺は雑多で自由な街だが、
その中でMAZEは一段落ち着いた“オトナのソウル空間”として重宝されていた。

飲んだ帰りに最後に寄る人、
ライブ帰りに腰を落ち着ける人、
週末の“締めの一杯”をMAZEで過ごす人──
多くの人の夜に寄り添っていた。

■ 2018年、静かに閉店——しかし、記憶は残った

閉店のニュースは高円寺のソウル好きたちの間で瞬く間に広がり、
「まだ行きたかった」「もっと通いたかった」
という声がSNSにも多く寄せられた。

扉が閉ざされても、
MAZEが高円寺の音楽文化に残した足跡は消えることはない。

店名のとおり、
“あの店で迷い込んだ黒い音の迷宮”
は、多くの人の中で今も静かに響き続けている。


■ 高円寺にふさわしいブラックミュージック/ソウル名曲3選

街の雰囲気・カルチャー・人の流れを踏まえて、
「高円寺の夜に似合うブラックミュージック」を厳選。

The Meters – “Cissy Strut”(1969)

理由:
高円寺の路地裏から聞こえてきそうな“無骨で粘りのあるファンク”。
この街の自由さ・ラフさ・気取らなさに完璧にフィットする。
古着屋を抜けて夜のバーに向かうとき、まさに高円寺の空気と同じ温度感。


Donny Hathaway – “The Ghetto”(1970)

理由:
高円寺は“都会の中のコミュニティ”が強い街。
人情味、商店街の温度、文化の混ざり合いを象徴するようなこの曲のソウルフルさが似合う。
ゆるく歩く高円寺散歩のBGMとしても最高。


Cheryl Lynn – “Got To Be Real”(1978)

理由:
夜の高円寺、軽く酔いながらバーで踊りたくなるあの空気。
その“解放感と明るさ”を象徴するディスコ・ソウルの代表曲。
ディスコで聴くよりも、高円寺でこの曲を聴くノスタルジー、たまんない。
ではこの曲を聴きながら、高円寺を後にしましょう!


■ まとめ

高円寺は、古くから“音楽と文化が自然と集まる街”として育ってきた。
ジャズもロックもソウルも同じ空気の中で共存し、
今もなお新しいバンドマンや音楽好きが流れ込み続けている。

そして、ブラックミュージックの深いグルーヴは、
この街の雑多さ、生々しさ、人間味と驚くほどよく馴染む。

──高円寺は、今日もどこかで“黒いグルーヴ”が鳴っている街だ。

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