by all means

GROUP

夜のハイウェイを照らすメロウ・グルーヴ。これぞ88年型ブラックミュージックの隠れた宝石。

BY ALL MEANS/『BY ALL MEANS』(1988年)

L.A.の西海岸サウンドに、ソウルフルでメロウな風を吹かせたトリオ、BY ALL MEANS(バイ・オール・ミーンズ)
メンバーは、リーダーでありキーボード&ヴォーカルのジェイムス・マッカント(James McCant)、その妻でシンガーのリン・マッカント(Lynn McCant)、そしてギタリストでヴォーカリストのビリー・シェパード(Billy Sheppard)の3人組。家族的な温かさと、プロフェッショナルなスタジオ・センスを兼ね備えたこのユニットが1988年にリリースしたデビュー・アルバムが、この『By All Means』だ。

80年代後半のアーバン・コンテンポラリー・シーンを代表する、洗練されたブラックミュージック作品として知られている本作。メロウなミッド・テンポ「I Surrender To Your Love」は、全米R&Bチャートで最高32位を記録。スウィートながらもグルーヴ感を損なわない完成度の高さは、まさにFM世代にぴったりの“ドライヴ・ミュージック”だ。

さらに注目は、カップリングでシングル・カットされた「You Decided to Go」。リンの艶やかなヴォーカルとビリーのハーモニーが絡み合い、都会の夜の情景を思わせる。メロディのセンスはまるで80年代後期のKashifやLoose Endsにも通じるアーバンさで、ブラックミュージックの成熟期を象徴するようなサウンドといえる。

アルバム全体を通して、フェンダー・ローズやリンドラムの柔らかな質感が心地よく、まるで深夜のFMから流れてくるような滑らかさ。プロデュースを手がけたのは、ジェイムス自身とビリー・シェパード。スタジオ職人らしい緻密なアレンジと、夫婦の呼吸の合ったヴォーカル・ワークが絶妙に融合している。

80年代後半のL.A.発ブラックミュージックは、ジャム&ルイス系のミネアポリス・サウンドとは異なり、もう少しスムーズでジャジーな方向に進化していた。本作もまさにその潮流にあり、「I Believe In You」「Let’s Get Started Now」などのトラックには、静かに熱を帯びたグルーヴが宿っている。

後に彼らは1990年の2ndアルバム『Beyond a Dream』でさらにソウルフルな方向へと深化していくが、デビュー作『By All Means』こそが、アーバン・ソウル黄金期を象徴する名盤だろう。
夜の街をドライブしながら聴きたい――そんなブラックミュージックの粋が、この一枚に詰まっている。

♪おすすめトラック:
・「I Surrender To Your Love」 (US R&B #32)
・「You Decided to Go」
・「Let’s Get Started Now」

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