TERRY STEELE

90年代

バブル終盤の東京湾岸を鮮やかに彩る、上質メロウR&B――“作曲家”が見せた“歌心”の本籍地。


Terry Steele『King of Hearts』

(1990/SBK Records)

80年代末~90年、作曲家として名を上げていたテリー・スティールが、満を持して発表したソロ作。発売は1990年、レーベルはSBK(米カタログK1-94101/CDはSBKCDP-94101)

収録曲

  1. Prisoner Of Love
  2. If I Told You Once
  3. Delicious
  4. Tonight’s The Night(※ロッド・スチュワート作「Tonight’s the Night (Gonna Be Alright)」のカバー表記あり)
  5. Get That Love
  6. Anyway You Want It
  7. What Cha Tryin’ To Do
  8. You Fixed The Wound
  9. Forever Yours
  10. My Prayer

シングル & チャート

  • “If I Told You Once”Billboard Hot R&B Singles(現Hot R&B/Hip-Hop Songs)最高9位(1990年)。
  • “Prisoner Of Love”Hot R&B Singles 最高41位(1990年)。

作品の聴きどころ

バブル景気の熱気がまだ街に残る1990年の東京。CDレンタルとFMエアチェックが日常だった頃、ブラックミュージックは「大人の都会派サウンド」として確固たる地位を築きつつありました。六本木~湾岸線の深夜ドライブに似合うメロウ路線、その理想形の一つがこの『King of Hearts』。

  • “If I Told You Once”は、スロウ寄りのビートに端正なメロディが乗るクワイエット・ストーム型の佳曲。作曲家ならではの譜割りの美しさと、シンガーとしての丁寧な語り口が両立。R&BチャートTOP10入りも納得の完成度です。
  • “Prisoner Of Love”は90年代頭の打ち込み質感に、柔らかなコーラスを重ねた都会的スウィート・ソウル。夜更けのFMでふと出会ってしまうと、思わずボリュームを上げてしまう。
  • “Tonight’s The Night”のカバーは、原曲の甘やかさを保ちつつ、90年型コンテンポラリーR&Bに換骨奪胎。ブラックミュージックの文脈で名曲を再解釈するセンスが光る。
  • “Delicious”“Get That Love”あたりのアップ~ミッドは、AORとR&Bの交差点。踊るより“流す”愉しみ――当時の日本の車内BGM事情(湾岸線~第三京浜の夜景とともに)を思い出させる音。

アルバムの位置づけ

テリー・スティールはルーサー・ヴァンドロス「Here and Now」(1989)の共作者として知られ、この曲はR&B1位/全米Hot100で初のトップ10(6位)を記録しました。

作曲家としての練達と、シンガーとしての誠実な表現力。その“二刀流”が穏やかに結晶したのが本作。派手なギミックはないぶん、ブラックミュージックの核であるメロディと言葉の温度がダイレクトに届きます。

当時の日本的トピックス(1990年前後)

CD普及のピーク期、深夜FMの“AOR~アーバン・コンテンポラリー枠”は黄金期。レンタルCD文化が音の“掘り”を後押しし、都心ディスコ~ラウンジではスロウ~ミッドの選曲も増加。ブラックミュージックは“おしゃれ”の代名詞として広く受容され、こうしたメロウR&Bは静かな人気を獲得していました。

Mark Morrison - Return Of The Mackロンドン発、世界を揺らした“アーバンUKファンク”。——マックは帰ってきた前のページ

L.A.のナイトグルーヴが、今ここに。次のページBobby Nunn「Second to Nunn」(1982)

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