——RandBの香りが交錯する“似ている”論争をめぐって
1978年、ロサンゼルスのディスコ・シーンを一気に席巻したシェリル・リンの「Got To Be Real」。パンチのあるベースライン、跳ねる16ビート、そして熱量あふれるシャウト。まさにポスト・ディスコ/ブギーの幕開けとなった名曲。
一方、日本では1992年、DREAMS COME TRUEが「決戦は金曜日」をリリース。こちらはJ-POP史に残る“ファンク・ダンス路線”の大ヒット曲で、当時のカラオケ、ラジオ、深夜のクラブまで、あらゆる場所で鳴り響いていました。


この二曲は、発売年代も国も違うにも関わらず、しばしば「似ている」「“Got To Be Real” の影響を色濃く感じる」と語られてきました。その背景には、いくつかの音楽的・文化的要因がありそうです。
1. 共通する“ブギー系ファンク”の構造
まず、音楽的に指摘されるポイントは以下の通りです。
●① 跳ねるバウンス感のあるビート
両曲とも ハネた16ビート によって、聴く者を自然と踊らせるグルーヴを持つ。
これは1978〜80年代初頭の“ポスト・ディスコ/ブギー”の文法で、シェリル・リンはその代表格ですね。
●② ベースラインの動き
「Got To Be Real」の印象的なベースラインは、ファンクをポップスに昇華した象徴的フレーズと言えます。
「決戦は金曜日」でも、上昇下降を繰り返す跳ねたベースラインが中心となり、曲全体を前へ押し出す役割を果たしています。
●③ 女性ボーカル × ダンス・グルーヴ
パワフルな女性ボーカルが前面に出る構造は共通。
吉田美和の歌唱スタイルはブラックミュージックへの造詣が深かく、70〜80年代ソウルからの強い影響は当時から公言されていました。
2. 1990年代J-POPが“ブラックミュージック化”した時代背景
1990年代初頭の日本では、
- マライア・キャリー
- ジャネット・ジャクソン
- ホイットニー・ヒューストン
- そして70年代ディスコの再評価
が一斉に起こり、J-POPが急速にR&B/ソウル的アレンジを取り込んでいたのです。
ドリカムはその最先端を走っていたグループであり、
「決戦は金曜日」はまさにこの“ブラックミュージック・ブーム”の象徴的楽曲と言えるでしょう。
つまり、シェリル・リンを含む70年代末のソウル/ディスコは、
ドリカム含む多くの日本のアーティストにとって“基礎文法”だったというわけです。
3. リスナー側の“既視感”が生まれる構造
当時、日本のディスコ世代には「Got To Be Real」は超定番曲。
一方で90年代の若い層には「決戦は金曜日」が初めて触れる“ファンキーな女性ボーカル曲”だったため、
「なんか似てる気がする…?」
「昔よく聞いたブラックミュージックの匂いがする」
という“デジャヴ感”が生まれやすかった。
つまり、両者の類似は“直接のコピー”ではなく、
同じルーツ=ブラックミュージックの文法を使っているから似て聞こえる
という構造が大きいのです。
■4. ドリカム自身のブラックミュージックへの深い敬意
ドリカムはデビュー当初から
- ソウル
- ファンク
- フュージョン
- ゴスペル
など、ブラックミュージックをバンドの根幹に置いてきた。
特に吉田美和は米国ソウルシンガーに並ぶ声量とファンク感で注目され、
中村正人はアース・ウインド&ファイアやTOTOなど、
70〜80年代アメリカ音楽に精通していました。
「決戦は金曜日」は“日本でファンクをやるならこうなる”という、
ドリカム流ブラックミュージックの完成型のひとつだったと言えるでしょう。
まとめ
シェリル・リン「Got To Be Real」とドリカム「決戦は金曜日」が “似ている” と語られる背景は、
- 70年代ディスコ〜ブギーの共通言語
- ベースラインとグルーヴの類似
- パワフルな女性ボーカル
- 1990年代J-POPのブラックミュージック志向
- ドリカムのソウル/ファンク愛
といった“音楽的・文化的な共通点”にあったのです。
決して“コピー”という単純な構造ではなく、
ブラックミュージックのDNAが、時代を越えて日本のポップスに受け継がれた結果として捉える方が自然でしょう。
この2曲はそれぞれのジャンルを代表する名曲です。一緒に聴き比べてあの頃を思い出しましょう。























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